Day Zero
お久しぶりです。
最後の更新日は2019年5月19日であり、その記事は現在オーストラリアの農業を苦しめている非常にシリアスな干ばつの内容でした。
あれから3か月半・・・。
雨は降っていません。
現在、ここGibraltar牧場周辺の気温は、最低が一桁、最高が28度ほどになり、春を迎えて随分と暖かくなってきました。
この「春を迎える」という事は、ファーマーにとって希望であり、光です。
冬の間に霜が降りる事により緑の草は枯れるため、家畜が十分な栄養を摂取する事は難しくなります。
そこをファーマーはコストをかけてエサやサプリメントを与えてながら、かろうじて草の育たない冬を乗り越えます。
その冬が終わり、霜も降りなくなり、気温も上昇すれば後は恵みの雨を待つだけなのですが、今年はそんな希望の持てる環境ではありません。それどころか、危機は拡大します。
冒頭でもお伝えしたように、雨が降りません。
2019年に入ってから9か月。当牧場の合計降雨量は100ミリに届くか届かないか・・・しか降っていません。
これは大雨に現在悩まされている日本の各地で1時間で降ってしまう量です。
牧場に流れる川は2018年の2月から流れておらず、水は一滴もありません。
また、牧場から少し離れたこの周辺の町は非常に重大な水不足に悩まされており、1日1人あたり100リットルしか水の使用が現在許されていません。
庭や畑の水やり、車の洗車などは禁止されており、町には砂ぼこりに包まれた車であふれています。
町民は水が町から消える「Day Zero」が数か月後に迫っていると怯えています。
我々の牧場は水道が通っていないため、雨水が生活水。しかし、その水はとうに無くなりましたので、タンクローリーで町の水を購入し運んでもらっている状況です。
牧場にとって、雨が降らないのに気温が上がるという事は、非常に恐ろしい。
牛は寒い時期でも1日に45Lの水を飲み、気温が上昇すると1日あたり60Lに跳ね上がります。
これがどういう意味かと言いますと、当牧場は最大で約400頭の牛を飼っていました。
400頭の牛が1日に飲む水の量は合計で、
400頭×60L=24000L/1日
という計算になるのですが、我々が町から購入している水の金額は1Lあたり約4円。
これを家畜に与える様になると、
24000L × 4円=96,000円/1日
という計算になります。
当然、このコストは牛にはかけられませんので、干ばつが酷くなる前から徐々に牛の頭数を減らし、牧場には現在約100頭しか牛がいません。
その100頭の牛に与えられる牧場に残った水は人工池の水2か所のみ。
この2か所の池の水の寿命は長くても1か月半と予想しています。
約2年間まともな雨が降っていないこの地域で、あと1か月半で全てを潤すほどの雨が降るのでしょうか。
隣の牧場は一生懸命育ててきた1500頭もの牛を全て売却しました。
理由は水が無くなったからです。
当牧場も2つの池が枯れる日は終わりの日になります。
たった1ミリの雨も非常に遠くに感じる毎日。
残念ながら、この現実の厳しさはなかなか人々に伝わりません。
日本に旅行中の雨の神様はアホです。
そんなネガティブな毎日をツイッターで更新しています。
http://twitter.com/gibraltar_masa
勝てないという事
こんにちは。
最近はGibraltar牧場のツイッターの更新に熱中し、ブログが疎か・・・。
今回は長文ですのでブログを更新してみました。
Gibraltar牧場のツイッターのフォローも是非お願いいたします。リンクは以下。
http://twitter.com/gibraltar_masa
さて、本題です。
2018年4月、ハングリータイガーを「テレビ東京 カンブリア宮殿」に取り上げて頂き、その際に当牧場にも撮影が入りました。
撮影が行われたのは、実際に放送があった2018年4月の2か月前の2018年2月初旬であり、ここオーストラリアは夏の終わりを迎えていました。
我々日本人に限らず「牧場」と聞いて想像した時に、真っ先に目に飛び込んでくるのは、広大な緑の敷地やサラサラと流れる澄んだ川。
遠路はるばる東京からお越し頂いたカンブリア宮殿の撮影スタッフのお二人が描いたピクチャーにもそのような牧場があったかもしれません。
ここオーストラリアの牧場の夏というのは非常に重要な季節であり、本来なら農業に関わる全ての人々が安心できる数か月になるはずなのですが、去年と今年は違いました。
気温の上昇と夏の雨を十分に吸収した牧草や作物はグングンと成長します。
緑の草が殆ど生えない寒い冬を耐えた家畜は、夏の栄養を口いっぱいに頬張り、緑の無くなる寒い冬に失ったものを取り戻すのに必死です。
動きの鈍くなった川も、夏のストームにより大量に流れ込む雨水を勢いよく下流に運び、全ての農家を潤します。
当Gibraltar牧場も、牧場内に約5kmほどの川があり、家畜や野生動物の飲み水も、我々の生活用水もその水を使用します。
「何とか撮影前に雨が降って、グリーンな牧場を撮影してもらいたいな」
「上流だけでも良いから雨が降って川が流れてくれないかな」
こんな会話をハングリータイガーの会長と撮影前に話していたのを覚えています。
あれから1年3か月、牧場の川は流れていません。
現在進行形でオーストラリアは深刻な雨不足、過去最悪の干ばつの真っただ中です。
牧場内の川は去年の11月に2週間だけ流れを取り戻しましたが、現在は、そこが川であった事を忘れてしまうほどです。
夏になると子供達が泳いでいた川の一番深くて広い場所、どんなに雨が降らなくても枯れる事が無いだろうと安心していたこの場所も今はこの有り様。
川底からの撮影です。
牛の飲み水の為に作った牧場内の20数個の人工池も殆どが枯れてしまっている状況で、僅かに水が残った池は野生動物と家畜の水の奪い合いになっています。
枯れた池
私の記憶では、昨年の11月に60ミリの雨が降ったっきり、まともな雨は記憶にありません。
ですから、今年の夏も草が育たず、厳しい冬に牛に与える為の牧草を作ることが出来ませんでした。
牧場は半分砂漠のようになっており、緑の牧場とは遠くかけ離れた世界が目の前に広がっています。
本当に草の無い牧草地
山の木々は死に向かって歩き始めています。乾燥のせいなのか、大きな木もいたる所で倒れています。
この大干ばつの影響は様々な被害をもたらしましたし、現在も進行中です。
【牛の死】
この牧場の牛は平均すると一頭450kgほどでしょうか。
冬や干ばつになり栄養のある草が減ると、体重はみるみる減っていきます。
体調を崩さない様に、乾燥牧草やサプリメント、予防接種など様々な事を行いますが、やはり自然の力には勝てずに、出産時に力尽きたり、体調を崩し死んでいく牛もいます。
牛は即死はしません。広い牧場の片隅でもがき、倒れたまま立ち上がれなくなる事が殆どで、そうなった場合は手遅れの事が多く、それらの牛は牧場主である私自身の手によって安楽死させます。
何度経験しても、絶対に慣れる事のない瞬間です。
【山火事】
極度の乾燥で、至る所で発生した山火事。
屋外での火気厳禁が続き、消防局のホームページには山火事のアップデートだらけ。
遂には牧場から40km離れた一番近い町で大規模な山火事が発生し、その焼失面積はなんと2億2千万坪にも及びました。
この面積は軽々と横浜市を全て焼き尽くす大きさで、この山火事の煙は40km離れた当牧場のも毎日のように届き、すぐ目の前の山が見えなくなるほどでした。
牧場を覆った煙
町に買い物に行くとこんな光景が。
【大洪水】
こんな大干ばつの最中、隣のQLD州の一部で大規模な洪水が発生し、50万頭の牛が犠牲になりました。その被害額は300億円とも言われています。
【エサ不足と価格の高騰】
去年と今年の干ばつが影響し、どこの農家でも牧草を生産できない状況が続いています。それにより牛に与えるエサの価格は高騰しています。
しかし、それを買わなければ牛は餓死します。
「では、牛を売れば?」
以下に続きます。
【牛の供給過多による価格の崩壊】
水がなければ牛は飼えません。エサが無ければ牛は飼えません。雨が降らなければ牧草は絶対に育ちません。人間はお金を得ないと生きていけません。
人々は極限まで雨を待ちましたが雨は降ってくれず、人々は諦めて牛を売る決断をします。
その考えの人はオーストラリア全土に居ます。私も同じです。
市場には捌ききれない数の牛があふれます。
牛の価格が下落します。大幅にです。皆様に言っても信じてもらえないようなとんでもない値段です。言葉は悪いですが、ごみの様な値段です。
【バランス】
上記でおかしな事が起きています。
牛が飼えない。飼うためにはエサが必要。エサが作れない。売りたくない。エサを探すも水がない。山火事で草が燃えてしまった。諦めて安価で売る。売ったお金では生活が出来ない。牛肉の価格は下がったか? いいえ。
【来年】
洪水で50万頭が死に、干ばつで物凄い数の牛が肉になりました。
さて、来年の出産シーズンにオーストラリアでは何頭の子牛が生まれるでしょうか?
産まれません。
食肉業者はそれでも牛肉を手に入れたい。
牛の価格は高騰します。
では、安価で牛を売ってしまった農家はどうやって再び牛を買いますか?
お金なんてありません。生活、税金に消えました。
【当牧場】
この干ばつを受けて、当牧場が受けた影響は酷いものでした。
・大幅な家畜の売却
当牧場には川があるため、最後の生命線である水はいつでもあるように思えました。しかし、それも無くなった為、昨年から今年に生まれた子牛ほぼ全頭、全体の70%の牛を売却。
・妊娠への影響
通常最低でも80%ある牛の妊娠率が50%に低下。
獣医曰くこれは各地で発生しているらしく、牛の生産に大きな影響を与えています。
今年妊娠出来なかった牛が次に子供を出産するのは2年後になるため、非情ですが、どんな優秀だった母牛でも売りに出す事を決断しました。
・野生動物
広い敷地の牧場には野生動物(主にカンガルー)がたくさん住んでいます。
草食動物は家畜である牛だけではなく、カンガルーも同じです。
山で生活していた大量の野生草食動物が牧草地に草と水を求めて下山しており、僅かな草や水、庭の草まで食い荒らしています。
・生活用水
牧場には水道が通っていないため、私たちの生活用水は雨水と、川の水です。
その生活用水も溜める事が出来ないため、タンクローリーで町から買うのですが、現在、町の水も危機にさらされているため供給も難しくなり始めています。
他にも様々な影響が至る所で発生しています。
夏を2年も牛なったオーストラリアはこれから冬になります。
一体この先どのようになってしまうのか。
相変わらず雨は降りません。
これが海や珊瑚礁やリゾート地で有名なオーストラリアの現実です。
お久しぶりです。
最近になって・・・
今さらですが、牧場のツイッターを始めました。
どんどん更新しておりますので覗いてみて下さい。
以下がツイッターのアドレスになります。
http://twitter.com/gibraltar_masa
よろしくお願いします👍
ACLとDrought ②
こんにちは。
前回はタイトルの前の部分ACLについてお話ししたと思います。
冒頭で牧場で二つの事が現在進行形で起きていると書いていますが、その二つ目の出来事「Drought」について記事にします。
現在、非常に深刻な状況です。
記事の中に気持ちが悪いと感じる内容も出てきますが、全て現実ですのでご了承下さい。
まず、タイトルのDroughtとは「干ばつ」という意味です。
このブログでも何度も何度も「雨が降らない」と嘆いていますが、それは長くても2か月ほど待てば雨が降り、気持ちも牧場も回復します。
でも、今回は・・・。
ブログを最初から読むのが面倒な方のためにもう一度詳しく説明しなければいけない事があります。
・オーストラリアは日本の20倍の面積があります。
・オーストラリアの国土の半分以上は農地です。
・という事はそれだけ家畜もいます。
・なのに、オーストラリアの9割は雨が常に不足しています。
・オーストラリアの家畜は放牧で育ちます。牛舎では育てず、牧草地に生える草や
川に流れる水を飲み生活しています。
家畜の餌になる牧草が必要とする水分、人間の飲み水、家畜の飲み水、乾燥した場合に散水するために流れる川の水。
このように水は非常に重要です。雨が降らなけらば水は当然ありません。
雨が降らないと以下のような事が起こります。
雨が降らない。
↓
牧草が育たない、牛の飲み水がない。
↓
牛が食べれない、飲めない。
↓
牛が痩せる。
↓
牛が餓死する前に売りたいと飼い主は考える。
↓
みんなそう思うから市場に牛が多く出回る。
↓
市場に必要以上の牛が一気に集まりますので買い叩かれ価格が下がります。
↓
人間の収入が減ります。
↓
じゃあ、安いから牛を売るのをやめよう!そんな事言っても・・・。
↓
牧場に水がありません、草がありません、ポケットにお金がありません。
↓
そうだ!牧草の種を蒔こう!
↓
水がなければ育ちません、そこらじゅうで雨が降らないから
種が売ってません、売ってても高価です。
↓
牛が売れないのでお金がありません。
↓
牛のために乾燥牧草を買おう!
↓
乾燥牧草は取り合いで高くて買えません、まず買うお金もありません
それに、昨年も雨が降らなかったから乾燥牧草は作れませんでした。
↓
牛は痩せ細り、立てなくなります。
↓
牧場主は泣く泣く家畜を二束三文で売ろうとします。
↓
牧場、生活が破綻します。
↓
あきらめます。
↓
1年後、まともな雨が降ります。
↓
草が生えます、水が飲めます
↓
今度は誰も牛を売りません。だって草も水もあるもん!
↓
市場に牛が出てきません
↓
牛の値段が上がります。
みんなこの最後の青文字の流れを待てません。
待てずに自ら命を絶った人もいます。
現在、この牧場があるNSW州の99%が干ばつに陥っています。
今年に入ってから8か月が経過しますが、ジブラルタ牧場はトータルで200ミリ以下の降雨量しかなく、22ある人工池の18は枯れ、牧場の真ん中に流れる川は写真の通りです。
普段の川の写真(同じ場所です)
オーストラリアは日本と季節が真逆ですので、今は真冬です。
草は霜が降りると枯れますし、寒さで育ちませんので、グリーンの草はひとつもありません。
グリーンだった草は枯れ、牛が食べたために極限まで短くなり、土が露出し、牧草地は真っ平らになります。
辛うじて草が短く残る庭には野生のカンガルーが押し寄せて、辺り一面糞だらけ。
山の上には水が無くなったため、カンガルーや鹿といった野性動物が牧草地に降りてきて、僅かな草も完全に食べてしまいます。
また、平地を走るハイウェイの路肩に生えた草を求めて野性動物が出てくるため、ハイウェイ上にはたくさんの野性動物の死骸が散乱しています。
もちろん全て車に轢かれたものです。
大袈裟では無く、酷い場所では5km走れば30頭の死骸が転がっています。
通常は夏の間にストームなどにより雨がたくさん降り牧草地の草のボリュームがアップします。 しかし今年は夏も現在も雨が全く降っていないために最悪な状況となっています。
私がオーストラリアで生活を始めて、間違いなく過去最悪な状況です。
テレビ東京「カンブリア宮殿」にてハングリータイガーを特集して頂き、4月半ばにテレビにて放送されました。この放送の中で牧場も少し取り上げて頂きました。その撮影は放送から約2ヶ月前の2月半ば。
牧場の撮影の際に撮影スタッフの皆さんに「雨が降ってなくて、川も枯れているし、緑の草がなくて良い画が撮れませんね」なんて話をしていたのですが、それから6ヶ月の間に雨と呼べる雨は降っていません。
水道の通ってない我が家の生活水は雨水と川の水ですので、当然家で使える水は2ヶ月前に空になりました。川にはポンプで汲み上げる水はありません。
仕方なく町から大型のタンクローリーを呼び18トンの水を購入しましたが、その水も無くなりそうです。
このように、ニュースで時より流れる干ばつの被害は至るところに影響します。経済にも、人間にも動物にも。
日本国内で生産される物も、世界中から日本に集まる食材も牛肉に限らずこのような苦労が少し入っています。
皮肉なものですね、日本では水害が起こり、オーストラリアでは干ばつが起きている。
日本もオーストラリアも早くこの状況から抜け出せる事を祈るばかりです。
ACLとDrought ①
こんにちは。お久しぶりです。
基本的に更新がされない事の言い訳と、謝罪から書き出されるこのブログの更新ですが、前回の更新から大きな事が二つ起こりました(現在進行形です)ので更新しようと久しぶりにブログの編集ページを開いたわけです。
前回の更新は、なんと2018年のご挨拶から始まり・・・。
この牧場とブログの管理人である私が人生を後悔しないように、若い頃プレーしていたラグビーを40歳にして再開しようという内容の記事だったと思います。
オーストラリアのラグビーのシーズンが本格的にスタートするのは3月頃からでして、地元のチームに参加した私は奇跡的にスタメンを獲得。
毎日の牧場仕事と週二回のラグビーの練習を乗り越える私の姿はまさに、ニンジンならぬ大好きなステーキを目の前にぶら下げられて、ジョッキーに必要以上にムチを入れられる馬のようです(笑)。
今回の記事は二つに分けまして、今回はタイトルにあるACLの部分をお伝えしようと思います。
恐らく、ACLと聞いてピンとくる方は今頃このブログを読みながら「爆笑」しているかもしれません・・・。
同時に「あ~あ、やっちゃった」なんて同情して下さっているかもしれません。
そのACLとは・・・。
試しにgoogleしてみると、出てくるのは「アクセス制御リスト」という馴染みのない言葉だらけです。ちなみに今回のACLはこの「アクセス制御リスト」ではありません。
ACLという言葉は英語ですので、日本語で言うともっと馴染みのある言葉になります。
では、試しに以下の言葉をgoogleで検索してみてください。
ACL 断裂
この様に検索してみると、「アクセス制御リスト」なんて全く出てこないどころか、膝の話しばっかりです。
そうです。
膝前十字靭帯 = ACL (-.-)
ACL断裂 = 膝前十字靭帯断裂 (T_T)
というわけで、3月末に行われたプレシーズンマッチで膝の靭帯が切れてしまい、早くもシーズン終了です(笑)。
しかも、もう一度ラグビーをやるなら、手術と1年間のリハビリがセットで付いて来るものですから「大好きなラグビーをやらずに後悔したくない」と格好良く言い切った前回のブログを消去したいほど後悔しております。
それなのに、膝に手術痕を残し、毎日リハビリを頑張る私は何なのでしょうか?
まだやるつもりなのでしょうか??
いずれにせよ牧場の仕事は力仕事だし、大自然の中、真っ平らな地面などありませんので、手術をキッチリ受けて、今後の仕事に差し支えないようにするのが最善でした。
もちろん無理は禁物です。1年間のリハビリと書きましたが、1年間何も出来ないわけではありません。術後数週間で松葉杖なしで歩けるようになり、無理をしない範囲で徐々に牧場仕事にも戻れます。
早く戻らないといけない牧場仕事ですが、その牧場にも現在問題が起きています。
今回のお話しはちょっとオチャラケていますが、次回「Drought」の内容は結構深刻です。
それでは、すぐに更新しますね。
2018年
あけましておめでとうございます。
新年から既に1か月以上経ってしまいましたが、2018年の最初の記事に合せて、この場を借りてご挨拶させて頂きました。
本年もこの気まぐれに更新されるブログを宜しくお願い申し上げます。
さて、昨年のクリスマス前から現在まで、ほぼノンストップで忙しい毎日を過ごしております。
昨年の12月頭より、大型ブルドーザーとショベルカーを扱う業者さんを牧場に呼びまして、木の生い茂ったパドックの改良と、牛の飲み水を溜める池を掘ってもらっていました。
ちなみに、このような大型の重機を扱う職業を英語で"Earth Mover"と呼びます。これを直訳すると(地球動かし屋)とでもなりますでしょうか。
しかし、それは大袈裟では無く、大きな重機はあっという間に地面を掘り起こしたり、荒れた土地をキレイにしてくれます。
写真を見てもらうとわかるように、まるで隕石が落ちたような地面は、今回の工事で作った池です。このような貯水池は大小関わらずこちらではダムと呼びます。
工事中のダムの底から撮影
クリスマス直前に終わったこの工事の後も、牧場では子牛を集めて去勢をしたり、子牛の耳に当牧場の所有物を示すタグを付けたりと大忙し。
その後は夏の牧草を蒔き終えたと思ったら、せっかく作った新しいダムのあるパドックに新しくフェンスを作り牧草を効率的に食べさせる事を始めました。
これはパドックコントロールと言われる大事な牧場管理のひとつでして、説明すると・・・。
現在パドックAの草を牛の群れが食べているとします。その間、パドックBとパドックCの入り口は閉めてあるので、牛はそこには行けないようになっています。
当然しばらくするとパドックAの草は少なくなってきます。そうしたらパドックBに牛を動かし、それと同じようにしばらくしたらパドックCに牛を動かします。
パドックCまで牛が辿り着くまでに、パドックAの草はまた伸び始めます。そうしたらパドックAにまた戻します。
この様に、牛をグルグルと動かし、常にフレッシュな草を食べさせるようにしています。
今回はブルドーザーで雑木林を処理したので、草が生える面積が広がりました。なので、フェンスを作る事を決めたのですが、距離は約1.2km。平地と急斜面を繰り返す土地の1.2kmはかなり長く感じます。
そんな毎日にプラスして、前々から言っていた地元ラグビーチームへの参加。そのオフシーズンのトレーニングが遂に始まりました。
更に、毎週月曜日のタッチフット(タックルやコンタクトの無いラグビー)にも参加しているので、週に3日は仕事の後にラグビーを行っています。しかも、練習グラウンドまでは往復で80kmの道のり。
練習開始は夕方の6時半なので、夕方まで仕事をして、着替えて練習へ行く。。。
1時間半程度の練習を終えた頃には体はもうキツキツです。
ちなみに、朝ベッドから起きる時もキツイ時があります・・・。
なぜそこまでしてラグビーをやりたいか?
凄く単純な理由です。
後悔したくないからです。
日本でサラリーマンをやってラグビーが出来なくなり、腰の手術も行って更にラグビーが出来なくなりました。しかし、いつだってまたラグビーをやりたいと思っていました。
ご承知のように、かなりタフなスポーツです。50歳になったら間違いなく出来ないでしょう。今なら40歳。あと2年ぐらいは出来るかもしれません。
50歳になった時に「ああ、もっとやりたかったな」と思う事が無いように、キツイのは承知でチャレンジしています。
何事も前向きに、2019年になった時に2018年を後悔しないような2018年にしたいところです。
では。
人手
こんにちは。
こちらの学校はあと1週間で夏休みとなります。
夏休みは約1か月半あり、来週から1月末までのお休みとなります。と言う事は、3人の息子が常に家に居るという事ですので、騒々しい1か月半が始まります。
朝から兄弟げんかして、昼もして、夜寝る直前までケンカしています(笑)。
もちろん度が過ぎると、僕の出番になるわけで、夏休み中は何度も落雷が予想されます。
そんな夏休みですが、親にとってプラスになる事も実は大いにあるのです。
こちらの牧場では、牧場内の仕事を手伝ってくれる労働者を「farm hand」と呼びます。その名の通り「牧場の手」牧場を手伝ってくれる方々を指します。
現在、ここGibraltar牧場にはFarm handは居ません。
オーストラリアの人件費は非常に高額なので、出来るだけ自分で仕事を行うようにし、足りない部分は家族に手伝ってもらうようにしています。
牧場には1人では出来ない仕事がいくつかあります。
子供の夏休みは、その1人で出来ない仕事を行う絶好のチャンスなのです。
夏休みにしっかり手伝ってもらえるように、普段の土曜日や日曜日に少しずつ仕事を教え、ちゃんとしたアシスタントになってもらえるように日頃から「訓練」しています(笑)。
この方法は、この辺の牧場では当たり前の事で、中学生になれば誰でもマニュアルの車やバイクは普通に運転できるようになります。
ウチの息子も同様に車も運転できますが、それは息子が乗りたくて始めたわけでは無く、仕事に必要なので、息子が小学校6年生の時に僕が教え始めたのが始まりでした。
本日は夏休み1週間前の土曜日。
今日は朝から息子と一緒に子牛の去勢やイヤータグを付ける仕事を行い、お昼ご飯を食べてからフェンスの修理に向かいました。
写真の様に、古くなったフェンスポストが倒れてしまい、フェンスも一緒に地面に倒れています。これでは牛が敷地の外に出て行ってしまいますので修理する事にしました。
まずは、この倒れたポストを取り替えなければいけませんので、それを調達します。調達と言っても町まで買いに行くわけではありません。
牧場内に生えています。だからそれを切って皮を剥いで使用します。
そのポストに最適なのが、薪でもお馴染みのアイアンバークの木。
出来るだけ真っ直ぐで形の良い物を選び、チェーンソーでカットして、ハンマーで皮を叩いていくと・・・。
こんなにキレイなポストに大変身です!!凄いでしょ??初めてこれを地元の人に見せてもらった時は非常に感動しました。
僕がチェーンソーで倒した木の皮を剥ぐのは長男の仕事。
皮を剥いだら次男と長男でトラックに運びます。まぁ、その時もケンカですよね。子供の二人にはまだまだ重たい木を、足の悪い地面を歩いて運ぶので、お互いイライライライラ。「早く歩けよ」「ちょっと待てよ」とケンカが始まります。
ケンカしながら先ほどの倒れたフェンスに向かい、穴を掘り直してポストを立てます。
切れたワイヤーを特殊な道具で引っ張って、倒れる前の姿に戻したら仕事は終わりです。
こうやって子供達は仕事を覚えて、知らないうちに一人で出来るようになるんです。
一生懸命頑張ってくれたので、クリスマス休暇にはブリスベンの町でも連れて行って、美味しい物でも御馳走しましょうかね。