"Gibraltar" オーストラリアの360万坪の牧場から

オーストラリアの田舎にて牛を育てる日本人のブログ。日本では有り得ない日常や日々の生活、360万坪の牧場での出来事を記事にしています。 過去の記事は旧ブログでご確認下さい。 旧ブログアドレスhttp://s.ameblo.jp/gibraltarmasashi/ 

ACLとDrought ②

こんにちは。

 

前回はタイトルの前の部分ACLについてお話ししたと思います。

冒頭で牧場で二つの事が現在進行形で起きていると書いていますが、その二つ目の出来事「Drought」について記事にします。

現在、非常に深刻な状況です。


記事の中に気持ちが悪いと感じる内容も出てきますが、全て現実ですのでご了承下さい。

 

まず、タイトルのDroughtとは「干ばつ」という意味です。

このブログでも何度も何度も「雨が降らない」と嘆いていますが、それは長くても2か月ほど待てば雨が降り、気持ちも牧場も回復します。

でも、今回は・・・。

 

ブログを最初から読むのが面倒な方のためにもう一度詳しく説明しなければいけない事があります。

 

・オーストラリアは日本の20倍の面積があります。

・オーストラリアの国土の半分以上は農地です。

・という事はそれだけ家畜もいます。

・なのに、オーストラリアの9割は雨が常に不足しています。

・オーストラリアの家畜は放牧で育ちます。牛舎では育てず、牧草地に生える草や

川に流れる水を飲み生活しています。

 

家畜の餌になる牧草が必要とする水分、人間の飲み水、家畜の飲み水、乾燥した場合に散水するために流れる川の水。

このように水は非常に重要です。雨が降らなけらば水は当然ありません。

雨が降らないと以下のような事が起こります。

 

雨が降らない。

牧草が育たない、牛の飲み水がない。

牛が食べれない、飲めない。

牛が痩せる。

牛が餓死する前に売りたいと飼い主は考える。

みんなそう思うから市場に牛が多く出回る。

市場に必要以上の牛が一気に集まりますので買い叩かれ価格が下がります。

人間の収入が減ります。

じゃあ、安いから牛を売るのをやめよう!そんな事言っても・・・。

牧場に水がありません、草がありません、ポケットにお金がありません。

そうだ!牧草の種を蒔こう!

水がなければ育ちません、そこらじゅうで雨が降らないから

種が売ってません、売ってても高価です。

牛が売れないのでお金がありません。

牛のために乾燥牧草を買おう!

乾燥牧草は取り合いで高くて買えません、まず買うお金もありません

それに、昨年も雨が降らなかったから乾燥牧草は作れませんでした。

牛は痩せ細り、立てなくなります。

牧場主は泣く泣く家畜を二束三文で売ろうとします。

牧場、生活が破綻します。

あきらめます。

1年後、まともな雨が降ります。

草が生えます、水が飲めます

今度は誰も牛を売りません。だって草も水もあるもん!

市場に牛が出てきません

牛の値段が上がります。

 

みんなこの最後の青文字の流れを待てません。

待てずに自ら命を絶った人もいます。

 

現在、この牧場があるNSW州の99%が干ばつに陥っています。

今年に入ってから8か月が経過しますが、ジブラルタ牧場はトータルで200ミリ以下の降雨量しかなく、22ある人工池の18は枯れ、牧場の真ん中に流れる川は写真の通りです。

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普段の川の写真(同じ場所です)

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オーストラリアは日本と季節が真逆ですので、今は真冬です。

草は霜が降りると枯れますし、寒さで育ちませんので、グリーンの草はひとつもありません。


グリーンだった草は枯れ、牛が食べたために極限まで短くなり、土が露出し、牧草地は真っ平らになります。


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辛うじて草が短く残る庭には野生のカンガルーが押し寄せて、辺り一面糞だらけ。

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山の上には水が無くなったため、カンガルーや鹿といった野性動物が牧草地に降りてきて、僅かな草も完全に食べてしまいます。


また、平地を走るハイウェイの路肩に生えた草を求めて野性動物が出てくるため、ハイウェイ上にはたくさんの野性動物の死骸が散乱しています。

もちろん全て車に轢かれたものです。

大袈裟では無く、酷い場所では5km走れば30頭の死骸が転がっています。


通常は夏の間にストームなどにより雨がたくさん降り牧草地の草のボリュームがアップします。 しかし今年は夏も現在も雨が全く降っていないために最悪な状況となっています。

私がオーストラリアで生活を始めて、間違いなく過去最悪な状況です。


テレビ東京「カンブリア宮殿」にてハングリータイガーを特集して頂き、4月半ばにテレビにて放送されました。この放送の中で牧場も少し取り上げて頂きました。その撮影は放送から約2ヶ月前の2月半ば。

牧場の撮影の際に撮影スタッフの皆さんに「雨が降ってなくて、川も枯れているし、緑の草がなくて良い画が撮れませんね」なんて話をしていたのですが、それから6ヶ月の間に雨と呼べる雨は降っていません。


水道の通ってない我が家の生活水は雨水と川の水ですので、当然家で使える水は2ヶ月前に空になりました。川にはポンプで汲み上げる水はありません。


仕方なく町から大型のタンクローリーを呼び18トンの水を購入しましたが、その水も無くなりそうです。


このように、ニュースで時より流れる干ばつの被害は至るところに影響します。経済にも、人間にも動物にも。


日本国内で生産される物も、世界中から日本に集まる食材も牛肉に限らずこのような苦労が少し入っています。


皮肉なものですね、日本では水害が起こり、オーストラリアでは干ばつが起きている。

日本もオーストラリアも早くこの状況から抜け出せる事を祈るばかりです。