"Gibraltar" オーストラリアの360万坪の牧場から

オーストラリアの田舎にて牛を育てる日本人のブログ。日本では有り得ない日常や日々の生活、360万坪の牧場での出来事を記事にしています。 過去の記事は旧ブログでご確認下さい。 旧ブログアドレスhttp://s.ameblo.jp/gibraltarmasashi/ 

動画で見てみよう キャトルヤード編

前回の記事で、畑に散らばる牛をバイクで集めてキャトルヤードに入れたところまでを動画で説明したと思います。

 

今回はキャトルヤードの中での仕事をご紹介します。

 

まず、畑から集められた牛をキャトルヤードに入れた理由は2つあります。

ひとつはキャトルヤードには牛をトラックに載せる為の牛用の階段のようなものがあります。その階段を牛に登らせてトラックに載せますので、出荷される牛は必ずキャトルヤードに入る事になります。

そしてもうひとつの理由は、耳についているボタン(ピアス)のようなタグ。特殊なハサミのようなもので、耳に穴をあけると同時にタグを付けます。このタグにはマイクロチップが入っていて、スキャンをすると牛の所有者の情報が見れる仕組みになっています。セリの管理者がこの情報を読み取り、牛が盗まれたり、違う人の物でないか確認できる仕組みになっています。このタグが付いてない牛は売れないため、全ての牛にタグが付いているかセリに出す前に確認します(時々とれてしまっている牛も居る為)。

 

キャトルヤードにはいくつかの囲いがあります。これは牛を分けやすくする為でして、例えば100頭の群れから子牛とオス牛とメス牛の3グループに分けたい場合は3つの囲いが最低必要になりますよね?

大きな囲いに集めた牛を小さな囲いに動かして、牛の動きに合わせて右に左に直進にという具合に分けていきます。


キャトルヤード①

 

狭い囲いに閉じ込められた100頭の牛ですから逃げ道を探します。一頭が左に行くとみんな左に行こうとします。しかし、左に動く牛の中に右に行かせないといけない牛も居る為、僕が体を張ってそれを食い止めます。

動画でどういう事か感じて頂ければ幸いですが、300キロの逃げ惑う牛数頭と4畳ほどの囲いに一緒に入り、それを体で止めるのは危険を伴う時もあります。なので、この仕事はまだ子供にはやらせる事が出来ません。


キャトルヤード②


パドックからキャトルヤードまで③

 

最後のタグを付ける動画ですが、知らないうちにおでこのカメラがずれていて変な所を写してます。スミマセン。


キャトルヤード④

 

こうして無事に77頭すべてが2階建てのトラックに載りセールヤードに運ばれて行きました。

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バイクや馬で牛を山や崖を歩かせる時も、キャトルヤードでの仕事も、やはり大きな動物が相手ですから自分の思うようにいかない場合もあります。

常に安全に気を付けて仕事をする事がこの牧場で一番大切です。

みなさんの食卓に牛肉が並ぶ前にはアメリカやアルゼンチン、そしてオーストラリアや日本・・・どこの国でもファーマーがこのように仕事をしています。

命を懸けて育てた牛がテーブルに並んでいるわけです。

だから美味しいんですね。

これは牛に限らず、魚もお米も、野菜もすべて同じです。

時々ファーマーの事も考えて食べて頂けたら嬉しいです。

 

動画で見てみよう 牛集め編

こんにちは。

昨日は今年最後の牛の出荷でした。

地元のセールヤード(セリの会場)で大きなセリが開かれたので、そこに僕の牛も出しました。

規模の大きなセリになればなるほど、遠方からもバイヤーがやって来るので、値段も上がりやすい傾向にあります。

人が多ければ多いほど文字通り競って入札する為に値段が上がるというわけです。

昨日は900頭の牛がセリに出され、ここGibraltar牧場からは合計で77頭の牛を出しました。

 

さて、いつもは文章と写真で牧場の様子を説明していますが、頭に取り付けるカメラを購入したので、試し撮りを兼ねて、牛を追いかけてキャトルヤード(牛を囲う柵)の中に入れる様子と、狭いキャトルヤードの中で仕事をする僕の様子を動画に撮ってみました。

動画はいくつかあるので、今回は牛を集める動画をアップします。

キャトルヤードでの仕事は後日アップしますね。

 

※画面がぶれる為、動画を見ていたら僕は船酔い状態になりました。同じような方がいたらごめんなさい。

 

まずは6万坪の畑に散らばる牛を集める動画です。


パドック~キャトルヤードまで①

 

 


パドック~キャトルヤードまで②

 


パドックからキャトルヤードまで③

 

動画内でもコメントしていますが、ここは平らな畑ですし、キャトルヤードまでも一直線なので、牛集めも非常に簡単です。

時には川を渡らせたり、何キロも歩かせたりと大変な作業です。

 

次回はキャトルヤードでの仕事を動画付きで記事にしますので、楽しみに待っていてくださいね。

では。

期待と裏切り

こんにちは。

日本の天気はいかがですか?

オーストラリアの気候は日本と似ています。夏も冬も似たような気温です。

ただ、こちらと日本の四季は真逆でして、わかり易い例えを言いますと、サンタクロースは真夏の気温40度の中煙突から入って来ます。笑

何年ここに住んでいても、ギラギラと太陽の照りつけるクリスマスと正月はピンときませんね・・・。

 

さてさて、突然ですが、皆さんは期待したり、されたり、裏切られたり、裏切った事ってありますか?

大小関わらず経験があると思います。

期待をするから裏切りも感じるのでしょうし、知らないうちに期待されているから、裏切られた!!なんて言われたりもするのでしょうね。

なんか、人生相談のような内容になってきましたが、牧場の話しです。

前回もこんな文章だったような・・・。まぁ気にしないで下さい。

 

夏になると基本的には牧草の種を蒔きます。これは草の伸びない冬に牛に与える為のエサ作りです。

牧草が伸びたらそれを根元近くからカットして、乾燥させて機械で圧縮して四角いかたまりにします。これを「ヘイ」と呼びます。

 

地面に落ちているのがヘイです。

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これは立派なエサですから、売買可能ですし、これで生計を立てている牧場は山ほどあります。

ここGibraltar牧場ではヘイは基本的に自分の牛だけの為に作りますので、売ったりはしません。

ただ、雨が降らずに牧草が収穫できなかった場合は、他の牧場から購入する事になります。

では、なぜわざわざ自分で作るのか?

理由は簡単です。「安いから」です。

他から買うより、約4~5分の1の値段で作る事が出来るから自分で作ります。

その牧草の種蒔きを先週雨上がりに行いました。

種を蒔く際は畑の土に水分がある、もしくはすぐに人工的にでも水分を与えられる事が条件です。ですから、雨上がりの後数日待って、ぬかるみが無くなった頃に種まきを行います。

もちろん、雨が降る前に畑を耕したり、雑草の処理などを行い、雨が降ればすぐに種を蒔けるように準備をしておきます。

トラクターに種蒔き機を連結し、今回の牧草「ミレット」の種と肥料を種蒔き機に入れて43000坪の畑を時速6.5kmでグルグルと周ります。そりゃあ時間がかかります・・・。

 

これが今回蒔いたミレットの種。

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これが種蒔き機。

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この箱に肥料や種を入れます。

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家庭菜園や、小学校の自由研究などで経験がある方もいらっしゃるかもしれませんが、種を土に埋めたからといって、必ず芽が出る訳ではありません。もちろん、種を埋める深さや肥料や土の質にも左右されますが、初めに書いたように、草も生き物ですから「水」が無ければ全く育ちません。

まず、雨上がりに種を蒔いた場合、間違いが無ければ大体は発芽してくれます。

しかしドライで気温の高いオーストラリアではここからが勝負です。

想像してみて下さい。産まれたばかりの赤ちゃんにミルクを与えないとどうなるか?

答えは簡単ですよね。

牧草も同じです。発芽した後に雨が降らず、土の中の水分も失われていくと、芽が出たにもかかわらず消えて無くなります。

実際に2年前の夏に蒔いた種は芽が出て、足首まで成長しました。が・・・その後とんでもない乾燥に見舞われて、畑からは何もなくなりました。そう。枯れてしまったのです。

緊急時には川から水を汲み機械で散水しますが、なにせ4万坪以上の畑に水を撒くのは費用と設備が物凄くかかりますし、ドライの時は、川にはポンプで吸い上げるだけの水がありません。

種を蒔いた後は天気予報を何度も見ます。期待して見ます。そして裏切られます。

裏切られる事の方が多いです。「空の人」から言わせれば裏切ったつもりは無いのでしょうが、僕は裏切られたと都合よく言っています笑。

 

今回の種蒔き。畑にはキレイに種蒔きの跡が残っています。

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土からは早くもミレットの芽が出始めました。

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ほら、さっきの写真の種から出てるでしょ!?

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表面は乾いているけれど、土の中にはまだ水分がある。

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どうか期待してますので裏切らないで下さいね。宜しくお願いします。

 

田舎にも忍び寄る危機

いやぁ、ほんとに今年はどうしちゃったんだろうか。

雨に恵まれるなんてオーストラリアのファーマーのだれが考えただろうか?

今日も嵐の予感。雲が低くなり暗くなり始めました。

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アメリカ大統領選挙の大一番ですが、このブログはその話題にも触れずに今日も牧場の話題です。


さて、何度か書いていますが、この町の人口は3千数百人しかいません。

その町から40キロも離れた山の中に住む我々家族は牧場に居る限り人に会う事は殆どありません。

会うとしたら、ご近所さんと車ですれ違ったりする程度ですが、ご近所さんと言っても、隣の家まで車で10分かかります笑。

ウチの牧場には川が流れており、魚が良く釣れます。また、自然に囲まれているので野生動物もたくさんいます。

シカや、ブタや、ウサギといった食べられる動物も多くいるので、魚と同様にそれらを狩りに来る人たちもいます。

こういった狩りをする人達の殆どは残念ながら無許可で牧場に入り狩りを始めます。

魚釣りの人達は、牧場の敷地の中に流れる川で釣りをしてるという意識が無いのでしょう。僕も日本の川で釣りをした事がありますが、その川や土地が誰の物か考えた事もありませんでした。。。

なので、釣り人は大目に見ています。

最悪なのが密猟者。

猟銃を使いシューティングする人達はシカやブタを撃ち、持ち帰り食用にしたり、ただの楽しみで殺していくだけの人達もいます。彼らは自分が無許可で牧場に立ち入ってる事を承知でハンティングを行う酷い奴らで、基本的に夜中に車に載せた明るいスポットライトで獲物を探します。

ここはブログのタイトルにもあるように、360万坪の広い土地で、山あり川あり谷ありですので、自分の家から遠く離れた区画は山や木々に阻まれて見渡す事が不可能です。

ですから、彼らは目の届かない場所で夜中にハンティングを行う事が基本です。

手書きの看板を牧草地に立ててありますが、彼らはそんな事おかまいなしです。

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「不法侵入したら起訴します」と書いてあります。


朝になると、見知らぬタイヤ痕が牧草地についていたり、弾丸の薬きょうやゴミが落ちていたりします。もっと酷いのは、区画のゲートを開けっぱなしにしたり、フェンスを壊したりしていく事で、普段は一つの牛の群れを40頭ほどに分けてコントロールしているのですが、朝見回りに行くとゲートが開けっ放しにされており120頭の牛が一塊になっている事も過去にはありました。

そんなわけで、夜中に銃声や明かりが見えた場合は、こちらもライフルを車に載せて追跡します。しかし、月明かりしかない牧場の山の中では大体の場合逃げられてしまいます。

過去に、何人か「職務質問」をしましたが、口をそろえて「逃げてしまった犬を探している」と言い訳をします。

夜中に犬を探してるわけはないので、車のナンバープレートを目の前でメモし、次回は無いぞと念を押し解放します。

こちらもライフルを持って行きますが、当然相手も銃を持っています。そりゃもちろん怖いですが、平和維持のためには仕方ありませんし、小さい町なので、僕が厳しく監視すれば、すぐに噂は広がり、不法侵入者は減っていきます。

実際に、最近では殆ど密猟者を見なくなり、平和な日々を過ごしています。

密猟者はそうやって退治しますが、最近平和だった田舎の農村もだんだんと治安が悪くなってきています。

この辺の農村の家で鍵が付いてる家を見た事がありません。僕の家も鍵はありません。

また、トラクターやブルドーザー、燃料で動く機械類の殆どは燃料タンクに鍵が付いていません。

無造作に積まれているこの乾燥牧草だって、売れば1個10ドルになりますが、誰でも手の届く場所にあります。

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この牧場には軽油2000リッター、ガソリン2000リッターが保管されていますが、カギはありません。

車の鍵も、出掛ける時以外は付けっぱなしです。

とにかく平和だし、人はいないし、隣人は家族のようなものなので、田舎はずっとこうしていました。

平和だからこういう事が出来ますが、泥棒から言えば取りたい放題。

人目につかずに燃料や工具、車両や機械を盗むことが出来ます。

それでも、牧場には猟銃があるせいか、今までは泥棒なんて農村には来なかったようです。

「今までは」です。最近は変わりました。

泥棒がここにも来ます。田舎をターゲットに盗みに来ます。ちなみに、家畜も盗まれます。オーストラリアでは数千頭の羊や牛が毎年盗まれています。

2年前にこの牧場も泥棒に入られました。家の物置を壊し、チェーンソーやグラインダー(鉄を切る道具)を持ち出して、家のドアを破壊し、家の床と壁にボルトで固定してあった金庫を床と壁ごと剥がして持ち去りました。

金庫の中には、紙とスペアキーのみが入っていた為、被害は家の修繕費だけで済みましたが、間違いなくこの牧場を知る人物でしょう。

どこにツールがあるか知っていて、金庫の場所もなんとなくわかる。

何故かと言うと、家の中のテレビやパソコンは手つかずのうえ、書類やタンスを物色した形跡はゼロ。パソコンやテレビ、家を壊すのに使ったツールだって売れば金になるのに全て持ち去らなかった。

最初に物置を壊してツールを取り出し、金庫に一直線。

だいたい誰だかわかっていますが、証拠が無いので泣き寝入りです。。。

それから我が家も物騒ですが、コレを付けました。

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みんなが信頼し合って成り立ってる出来ている農村のコミュニティー。それを壊しかねない事件は勘弁してもらいたいですね・・・。

 

僕が言っても説得力ゼロですが、しっかり鍵をかけてお出掛け下さいね。


 

牛助け

このオーストラリアの田舎にある牧場に家族で移住してきてしばらく経ちますが、今でも鮮明に覚えている事があります。

言葉の違う国に来て生活を始めた一年目はまさに右も左もわかりませんでした。この街の事を何も知らずに、どこに何があるかもわからず、ウロウロする事もしばしば。

ある日、テレビが家に無かったため、テレビのアンテナを取り付けて貰おうと電気屋さんを探していた時の事。
どうしても見つからずにいたので勇気を出してスーパーの駐車場に居たオジサンに声をかけ道を聞いた。ちなみにここは人口三千人の街で、ほとんどが顔見知りや友人知人ですから、我々はまさに違う星の人である。

そんな我々にそのオジサンは即答で「車で来てる?じゃあ俺に付いてきな!」と言って我々の車の前を走って電気屋さんまで先導してくれた。

これだけじゃない。今までにどれだけ地元の人に助けてもらったか数え切れない。
こんな風にいつも助けられ生きています。

助けると言えばつい先日の話し。
夕方に家族が僕を急いで呼びに来た。

どうやら子牛がグリッドに落ちたらしい。
「グリッド」というのは、写真のように隙間の開いた鉄のレールの事で、家畜がこの先に行かないように道路に掘った穴に被せてあるものです。
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牛は脚が落ちるのを怖がり、ここを渡りません。
しかし、子牛はそんなの関係無し。
お母さんに向かって一直線ですからまぁ落ちます。

早速落ちた子牛を助けに行くと、いつもと様子が違う。
だいたいグリッドに落ちる場合は脚が落ちて身動きが取れなくなる。
しかし、今回はグリッドの隙間から後ろ足が出ている。
どうやら隙間にヘッドスライディングを決めたようだ。しっぽをフリフリ動かして、まるで助けを呼んでいるようだ。
近くでは何も出来ずに母親がモーモー鳴いている。
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この母親はいつでも身体が大きい事から、子供達が「ビューティーさん」と名付けたおとなしい牛。
早速子牛を助け始めた僕にすがるように鳴いている。
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子牛と言っても80キロはあるので結構重い。最後は長男と一緒引っ張りあげて一件落着。

すぐに僕の前でミルクを吸い始めた子牛を見て安心して家に帰りました。
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めでたしめでたし。

あれと、これと、それと

牧場には土曜日も日曜日もありません。
天候によっても休日が左右されますし、休もうと思ってても、牧場から出ない限りは何かしらを見つけては結局休んでません。
その代わり、昼休みは家に戻って家族と食事をしたり、夕方には目の前の川で釣りをしたり出来るので、ストレスは溜まりません。

さて、今日は日曜日。
朝から子供に手伝わせながら牛の世話をして、その後バイクのメンテナンスを行いました。
最近の雨のおかげで畑はぐちゃぐちゃ。予定してた農薬散布が出来なくなったので、夕方前に前からやりたかった事を子供とやる事にしました。

やりたかった事と言うのは「鶏の丸焼き」。
オーブンで調理したことは何度もありますが、外で火を使っての丸焼きは未経験です。

数日前に妻に鶏を買ってくるようにお願いしておきましたので食材はあります。しかし、日曜の午後に完全に思いつきで始めたわけなので、焼くための材料がありません。

都会なら車に乗ってホームセンターに直行となるわけですが、こんな田舎では日曜日に開いてる店なんてガソリンスタンドしかありませんし、町まで買い物に出かけていたら、日が暮れてしまいます。

しかし、ここは古くからある牧場。
何十年も前のオーナーが残していったガラクタなどがたくさん置いてありますので、何か「丸焼き機」の作成に使えるものは無いか物色した所、出るわ出るわ宝の山。

まず、芝生の庭でブロックや石を積み重ねて焼き場を作ろうと思い、手ごろな石を探していると、古いバスタブを発見。
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この中で火をつけて、その上でチキンを焼く事を考えましたが、何かが溶け出しても嫌なので却下。

すると、その近くに割れた土管を発見。これは使える!!
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中にナメクジがたくさん付いてましたが、そんなの関係なし。

土管の中に木を入れて火を着ければ芝生は黒くなってしまいますので、そこはドラム缶のフタを流用。
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次に鶏に突き刺す鉄の棒。

これはBBQセットの付属品が使えそうだ。

この鉄の棒を支えるのは、簡易フェンスの為の杭と、庭に置いてあった椅子の背もたれ。

全て外にあったもので立派な「丸焼き機」が完成しました。

あとは、冬に使った蒔の残りや、その辺の枝を使って子供が火をおこします。
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二歳の三男も火の周りでウロウロしたり、落ちていた木を火にくべたりしていますが特に気にしません。
こういう時には「火に触るな!」「あっちいけ!!」って怒るより、軽く熱い思いをするまで放置するに限ります。
痛い目に合えばすぐに学習しますからね。

親はその周りで椅子に座って鶏をクルクル回す。
子供が火に触る事は気にしなくても、鶏の周りで走り回る子供は気になります。
二時間もかけて調理するわけですから、落下させようものならもう大変です。
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ポタポタと落ちる油や、皮の焼ける香りでビールを飲みながら待つこと約二時間。
中はジューシー、外はカリカリの美味しい鶏の丸焼きが完成しました。
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バーベキューセットで盛大にバーベキューも良いですが、ちょっと工夫してみると子供も大人も凄く楽しめます。

こうしてリフレッシュし、初夏の忙しさに耐える為のスタミナを手に入れたのでした。

ある物が無い

さて、こちらはどんどんと夏に向かっています。
夏が近付くと増えるのはハエ。
オーストラリアはハエが多いのですが、家畜が居る牧場は凄いですよ。
ちょっと外に出ればコレ。
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これも不思議と慣れちゃうんですよね。

慣れといえば...
ここは何度も書いたと思いますが、一番近い小さな街から40km離れている山の中なので、日本で当たり前のように使える物がここでは当たり前じゃなかったり、違う方法だったりします。

それを一部まとめました。

水道
通ってません。
雨水、川の水をタンクに貯めて使います。水道を使う為の工事は全て自分が行います。
生活で使う水の最大貯水量は約8万リッターです。
凄い量と思われますが、2年前、3年前は雨が降らずタンクは全て空っぽになりました。
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電話
ちゃんと家の電話線はあります。
ただし、雨が続くと不通になる事が多々有ります。


携帯電話
電波は基本的に皆無です。山の上まで車を走らせると何とか電波が拾えます。


インターネットとテレビ
衛星からのシグナルを屋根の上のパラボラアンテナでひろいます。
最近新しい衛星が上がり、速度は速くなりましたが、以前は動画はもちろん見れませんし、音楽や映画のダウンロードは数時間から数日は覚悟でした。
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電気
あります。ただし、ストームの発生する夏は停電祭りです。
ここには電柱が有りますが、電柱が無い家はソーラーパネルを使います。電柱を立てるには一本300万円するらしいです。
我が家は停電したら発電機を動かし、少ない電力だけ確保します。


給油
一番近いガソリンスタンドまで往復80kmかかるし、トラクターなどを持っていくわけにもいかないので家にはディーゼルとガソリンそれぞれ2000リッターずつタンクがあります。タンクローリーで配達してもらい、タンクに入れてもらいます。
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郵便
田舎なので、月曜日と木曜日の2日しか配達はありません。日本で言う宅急便は家まで来てくれず、町のガソリンスタンドに届くので取りに行きます。


公共のバス、電車
ありません。


信号機
200km先に1台あります。


他にも色々と有りますが、書き切れません。。
川の水のシャワーも、雨水の料理も何にも抵抗は有りませんよ。
逆に都会のホテルでうがいをしたり、シャワーを浴びると消毒の臭いが気になります。
ネズミも大量のハエも牛の糞も気にならなくなります。
逆に都会の排気ガスやタバコの臭いが辛くなります。

水や環境が原因で病気になった事はありません。

ここに来てから感じるのは、人間どこでも生きられる。
家があって雨風凌げれば不自由はありません。

また、何事もチャレンジすれば出来ない事は無いという事。

怖がらず学ぶ姿勢をいつも持っていたいですね。
これは都会でも同じ事だと思います。