Day Zero
お久しぶりです。
最後の更新日は2019年5月19日であり、その記事は現在オーストラリアの農業を苦しめている非常にシリアスな干ばつの内容でした。
あれから3か月半・・・。
雨は降っていません。
現在、ここGibraltar牧場周辺の気温は、最低が一桁、最高が28度ほどになり、春を迎えて随分と暖かくなってきました。
この「春を迎える」という事は、ファーマーにとって希望であり、光です。
冬の間に霜が降りる事により緑の草は枯れるため、家畜が十分な栄養を摂取する事は難しくなります。
そこをファーマーはコストをかけてエサやサプリメントを与えてながら、かろうじて草の育たない冬を乗り越えます。
その冬が終わり、霜も降りなくなり、気温も上昇すれば後は恵みの雨を待つだけなのですが、今年はそんな希望の持てる環境ではありません。それどころか、危機は拡大します。
冒頭でもお伝えしたように、雨が降りません。
2019年に入ってから9か月。当牧場の合計降雨量は100ミリに届くか届かないか・・・しか降っていません。
これは大雨に現在悩まされている日本の各地で1時間で降ってしまう量です。
牧場に流れる川は2018年の2月から流れておらず、水は一滴もありません。
また、牧場から少し離れたこの周辺の町は非常に重大な水不足に悩まされており、1日1人あたり100リットルしか水の使用が現在許されていません。
庭や畑の水やり、車の洗車などは禁止されており、町には砂ぼこりに包まれた車であふれています。
町民は水が町から消える「Day Zero」が数か月後に迫っていると怯えています。
我々の牧場は水道が通っていないため、雨水が生活水。しかし、その水はとうに無くなりましたので、タンクローリーで町の水を購入し運んでもらっている状況です。
牧場にとって、雨が降らないのに気温が上がるという事は、非常に恐ろしい。
牛は寒い時期でも1日に45Lの水を飲み、気温が上昇すると1日あたり60Lに跳ね上がります。
これがどういう意味かと言いますと、当牧場は最大で約400頭の牛を飼っていました。
400頭の牛が1日に飲む水の量は合計で、
400頭×60L=24000L/1日
という計算になるのですが、我々が町から購入している水の金額は1Lあたり約4円。
これを家畜に与える様になると、
24000L × 4円=96,000円/1日
という計算になります。
当然、このコストは牛にはかけられませんので、干ばつが酷くなる前から徐々に牛の頭数を減らし、牧場には現在約100頭しか牛がいません。
その100頭の牛に与えられる牧場に残った水は人工池の水2か所のみ。
この2か所の池の水の寿命は長くても1か月半と予想しています。
約2年間まともな雨が降っていないこの地域で、あと1か月半で全てを潤すほどの雨が降るのでしょうか。
隣の牧場は一生懸命育ててきた1500頭もの牛を全て売却しました。
理由は水が無くなったからです。
当牧場も2つの池が枯れる日は終わりの日になります。
たった1ミリの雨も非常に遠くに感じる毎日。
残念ながら、この現実の厳しさはなかなか人々に伝わりません。
日本に旅行中の雨の神様はアホです。
そんなネガティブな毎日をツイッターで更新しています。
http://twitter.com/gibraltar_masa