"Gibraltar" オーストラリアの360万坪の牧場から

オーストラリアの田舎にて牛を育てる日本人のブログ。日本では有り得ない日常や日々の生活、360万坪の牧場での出来事を記事にしています。 過去の記事は旧ブログでご確認下さい。 旧ブログアドレスhttp://s.ameblo.jp/gibraltarmasashi/ 

二択問題

こんにちは。

先日日本に帰国した際に、仕事でお付き合いのある方から「ブログ見てますよ」と言われてとても驚きました。

改めてサボり癖のこびり付いたこのブログを改善します!!と宣言させて頂きます。(通算8回目)

さて、今回の日本滞在時にとある料亭にて行われた会食に参加させて頂きました。

普段は牧場で写真の様なボロ切れを着てるようなものなのですが、f:id:gibraltarmasashi:20171017153607j:plain

さすがにその日は「ちゃんとした格好」で参戦いたしまして、ポケットにはポケットナイフでは無く名刺入れ。名刺なんて渡豪して7年まともに渡してないし、お会いし名刺の交換をして頂いた皆様は言わばビジネスの「大師匠」ばかり。

そんな大師匠に7年ぶりに「ちゃんとした格好」で名刺を渡すもんだから構えちゃって構えちゃってどうしようもない・・・。

そんなカチコチ状態の私に「ブログ見てますよ」と声を掛けて頂いてからは何とか持ち直しまして、無事に会食はお開きとなりました。

 

さてさて、牧場の話しですが、6月~9月はとんでもなくドライで、毎朝のフロスト(霜)で草なんてありゃしません。

しかし、10日間の日本旅行を楽しみ牧場に戻るとなんとビックリ凄くグリーンになっていました。

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牧場と違った美しさですね。


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どうやら日本滞在中に雨がたくさん降ったうえ、まだまだ降る予感の曇り空が続いています。

そんな牧場に戻り、スーツケースの片付けは息子に任せ、僕はすぐにバイクにまたがり牛達の様子を見に行きました。

短いながらグリーンになった牧草や、枯れる寸前だった池や川の水を楽しむ牛達はとても幸せそうで、ホッとしながら最後のパドックへ。

するとそこには死んではいないが横たわって動けなくなった母牛がおり、その側で痩せた子牛が佇んでいました。どうやら、出産して間もなくは子牛にミルクをあげながら普通に生活していた母牛が何らかの理由で倒れてしまい、子牛がミルクを飲めない状況になっていました。

なんとか母牛を立たせようとしましたが、もう最後の力を出せるような状況では無く、僕の7年の牧場経験からも、母牛が生き残る可能性はゼロと判断しました。

そうなると子牛の今後を考えます。

ここからはキレイごと無しの正直な話しです。

この様に子牛だけが残された状況は今回が初めてではありません。何度も経験があります。初めのうちは子牛の生存だけを考えてすぐに子牛を捕まえてミルクをあげて育てました。それを重ねると現実的に以下のような考えが生まれます。

 

・子牛を引き取ると毎日2~3回ミルクを哺乳瓶であげる(忙しくなる)

・哺乳瓶で育てた牛は成長が遅い(いつまでも小さい)

・ミルク代、エサ代のコストがかかる

・成長の遅い子牛を売ったとしても、殆どの場合そのコストをカバーできない。

 

これが現実的に見えてきます。

なので、パドックで一人で物凄く考えます。葛藤します。

 

「自然界では毎日のように起こる現象だ」

「コストを掛けても返ってこない」

「ミルクをあげ始めたら家を空けられない」

「そうだ、このまま放っておこう・・・」

 

必ずこれを考えます。自分に問います。

結論は写真の通りです。

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この子を僕は野たれ死にさせる事は出来ません。

そんな僕の気持ちを知っていたのか、この子は母親が動けなくなってから一人で草を食べて生きていた為に草をたくさん食べます。ミルクは不要です。

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僕は知っていました。

今日も僕にすり寄ってエサを欲しがるこの子牛を捨てる選択肢は他には無かった事を。